鎌倉のギルドと魔法の話

2017年1月2日(月)

鎌倉に「ギルド」というふしぎなお店がある。
何のお店か説明が難しいのだけど、一言でいうならオリジナルのチャーム(キーホルダーのようなもの)屋さんである。店中に吊るされている色とりどり・さまざまな形のチャームを選び、店主に渡して好きな言葉や模様を伝えると、その場で彫ってくれる。値段はどれも数百円。売り物以外にも、狭苦しい店内のそこらじゅうに、奇妙な手づくりの仕掛けおもちゃがいっぱい飾られている。

私が小学生の頃は、ここで友だちとおそろいのチャームを作るのが流行っていた。犬を飼い始めた時は、首輪につけるチャームに名前を彫ってもらった。その犬が死んでしまった時は(すでに私も妹も二十歳を過ぎていたけれど)、家族で店を訪れ、犬の名前を彫り込んだチャームを家族全員分、作ってもらった。

やや毒々しい原色ブルーやピンクや黄色で、ただ星やハートをかたどっただけの樹脂製のチャームは、小学生女子にとってさえ、おしゃれなわけではなかった。だけどギルドは、本当に特別だった。お店は今年で45年くらいになるらしいが、たぶん好きな男の子の名前を彫ってもらった小中学生女子は、数え切れないくらいいたと思う。

Charmというのは、お守りや魔除けを意味する。似たようなものは昔から、千社札とか根付とか入れ墨とか、色々あった。だけどそれらはたいてい、宗教を裏付けにしてきた。犬も歩けばお寺や神社にぶつかる鎌倉にあって、何の宗教もないギルドのチャームは本物だと思う。何を彫りますか、と問われて何らか言葉を選んで告げた時、それが彫り込まれた瞬間から、その人にとってだけ発動する祈りや呪術のようなものが宿ってしまう。それ自体おしゃれじゃないしアクセサリーみたいな別の用途もないから、突き詰めれば持つ理由がない。あるとすれば、信じる気持ちだけだ。

私も、ギルドみたいな商売をしたい、とちょっと思う。それ自体は何の役にも立たないけれど、信じる人にだけ魔法がかかるようなもの。それは平たくいえば、「ことだま」や「まじない」のようなもの。だけどみんな同じ神様じゃなくて、ひとりひとりみんな違う神様を作り出せるようなもの。それらがわっちゃわっちゃと共存している状況を、にやにや笑って眺めていたい。

 

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