武雄日記(1)旅ぐらしの胃袋

2016年12月12日(月)

成田空港11:35発の春秋航空で佐賀国際空港へ。ここ半年ほど忙しすぎたので、一人旅にちょうどいいタイミングだった。

今日から5泊6日で、佐賀県武雄市に滞在する。まちづ社が武雄市と一緒に仕掛けている『TAKEO MABOROSHI TERMINAL(通称TMT)』というまちづくりプロジェクトの一環で、「武雄に滞在して何か作ってみないか」と声をかけていただいたのだ。

 

14409833_1179795955413118_401038864823875118_o

今回の滞在についてはインタビュー記事で少しお話したのだが、何をするとかどこに行くとか、あまり決めずに来た。ただ楼門をイメージした、赤い服装で毎日過ごすことだけ決めていた。スーツケースの中がやたら赤い。

空港から武雄温泉へは、予約制のリムジンタクシーで。地元の「武雄タクシー」と「温泉タクシー」が毎日交代で送迎している。「温泉タクシー」って、全国これだけ温泉のある国で、なかなか思い切った名前だ。かわいい。

滞在先は、武雄温泉にほど近い「中町」というエリア。昔ながらの商店街とスナック街が共存しているのだが、ふしぎと落ち着く街並み。滞在先はここ中町で地域のことに取り組んでいる、井上さん宅。井上さんは「井上葬祭」という葬儀社をやられていて、その造花店だった路面店舗がTMTの事務局に生まれ変わっている。

もともと井上さん自身やご家族が趣味を楽しむための大きなガレージがあって、その2階の一部屋が今回のクリエイター用の滞在スペースだ。井上さんご自身の趣味は写真なのだが、かなり本格的で、なんとガレージ内に暗室まで持っている。

荷物を置いて寺田さんたちと一緒に温泉通りを少し歩いた。道すがら、武雄の名産品にもなっている「宮地ハム」で佐賀産豚のハムを買ったり、おしゃれなお肉屋さん「肉のなかしま」で熱々のカレーパンとコロッケを買い食いしたり。って肉屋さんばっかり寄っているが、つまりはお腹ペコペコだった。

解散後、次の予定まで小一時間あったので、門前町にある喫茶店・レストラン、中村屋へ。メニューにはグラタン、ドリア、カレーと魅惑的な洋食が並んでいてお腹が鳴ったが、夕食の約束を控えていたのでホットケーキにした。別の席で尾崎さんはちゃっかりグラタンセットを頼んでおり、ホワイトソースの温かい匂いがふんわり漂ってきた。

夜はまちづ社主催のワークショップがあり、その後遅くから飲み始めたので帰る頃には0時を回ってしまった。武雄温泉はすでに閉館なので、京都屋さんという旅館の立ち寄り湯へ。午前1時を回っておおかたの入浴客も帰る頃で、浴室には私一人だった。泉鏡花の『眉かくしの霊』を思い出して、洗い場の自動ドアが開くたびに(自分が感知されているんだけど)ドキリとした。

鏡花は東海道中膝栗毛が好きだったせいか、小説の舞台として宿場町がよく出てくる。『眉かくしの霊』は旅先で出会う食べ物の描写がものすごくおいしそうで、繰り返し読んでしまう。汁がぽっちりの冷えたうどんですげなくされた話からの、山賊みたいに熊の毛皮の上にあぐらをかいて食べる、ざくざく山盛りのネギと一緒にぐつぐつ煮込む、つぐみ鍋。読むといつも、自分までハフハフ言いながら熱いつぐみにむしゃぶりついている気になって、お腹が空いて、旅に出たくなる。

旅ぐらしなら、丈夫な胃袋だけは持っていきたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です