フィリピン日記 20160604・本番編

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2016年6月4日(土)

一夜明け、本番2日目はだいぶリラックスした雰囲気。JKの家で、インターナショナル・アーティストたちを招いた朝食会があるのでペピンと一緒に参加した。アイリーンのごはんは本当に美味しい。

12時過ぎ、Mariaと合流して再びPhilcoaへ、花売りの家族へ会いに。花はもう買ってしまっていたけど、彼らにまたパフォーマーとして参加してほしいと話に行った。もう100ピースくらい追加で買ってもいい。Mariaからは交通費か食事が必要だと思うと言われていたので、交通費150ペソを出すことにした。

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昨日会った女性たちは、ジョリビーの駐車場の木陰で花輪を作っていた。木の根元に寝転がる子どもたちと遊んでいたら、「作ってみる?」と針と糸を渡された。見よう見まねで花に糸を通していく。シンプルだけれど、傷みやすいサンパギータの花をフレッシュに保ちながら花輪を作るのは、しかもこの炎天下で何千本も作るのは決して楽な仕事ではない。作らせてもらった分の花代を払おうとしたが、いらないと言う。

100ピース400ペソで買う約束をして別れ、劇場に向かう車の中で「私、Maginhawaで子どもたちが売る花を高いと思っていたけど、いま彼らが手づくりするのを見たら全然高いと思わなくなった。このことについて何か来年、プロジェクトができるかもしれない」とつぶやくと、Mariaがくるりと振り向いて「やりましょう!!」とこぶしをぐっと挙げた。

午後2時、ワークショップ開始。今日は参加予定だったACAYが金曜に振替になったため、「Communities」(マニラの都市拡大から弾き飛ばされたコミュニティの人々)はいないが、Aninoのサポーターとしてコラボレーターに名を連ねている学生の影絵劇団・Karilyoから15〜20人くらいの子たちが参加してくれていた。その他には、教会付きの劇団の若い子たちや演劇を学ぶ学生たち、りっきーのプロジェクトのチームメンバーとして日本から来ているYukoさんやタカハシ・タカカーン・セイジさんも参加してくれた。Aninoの元・創立メンバーでKei君の芸術学の先生が甥っ子たちを、Sipatの元メンバーTheaが子どもを連れて参加してくれた。

本番直前に、日本人女性3人を連れたフィリピン人女性がやってきた。彼女は英語学校の先生で、1〜2ヶ月間フィリピンに語学留学に来ている生徒たちを連れてきてくれたという。Aninoのメンバーで、シドニーでキュレーターをしているPaschalも参加者としてグループに混じってもらい、なるべく年齢構成や国籍がばらばらな顔ぶれ+影絵の経験値が高いKarilyoという構成にした。

結果からいうと、プロセスは初日ほどエキサイティングではなかったが、影絵のクオリティはKarilyoのいたおかげで格段に上がった。パペットのデザインから演技まで引き出しが多いし、作業スピードが上がったのでリハーサルの時間も十分取れた。動きの構成も前日の反省を活かしてより整理してあったし、Andrewがタガログ語で参加者たちに動きを指示してくれた。今日は日本人も多かったので私はほぼ日本語で話し、Kei君が英語に訳し、それをTetaやAndrewがタガログ語で意訳するという形で進んでいった。Kei君の働きも本当に素晴らしかった。彼はKARNABALや私のプロジェクトに対する理解が深いだけでなく、現場にも強いのだった。

2日目のショーでは、2)SOMATOの影絵のパートで「言葉を使わない」という演出にした。1日目はみんなの答えがあまりに美しくて何をつくったのか喋ってもらったのだけど、ショー全体が長くなるし、私はタガログ語が分からないので内容や質を確認できない。この判断で結果的に、Karilyoとの相乗効果でショーとしての成立度合いが上がった。ラストシーンは小学校低学年くらいの兄弟がつくった「ドーナツの走馬灯」だった。箱の中のドーナツをパペットにした兄と、おしりから出てきたうんちが車に轢かれるパペットをつくった弟の作品を合体させたお話で、笑って終われたのが最高だった。

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(photo by Leo Kevin Mendiola

プロセスについてひとつ印象的だったのは、語学学校から来た日本人女性3名が途中で帰ってしまったこと。ワークの最中、私は各チームを見まわっていたので彼女たちにも折々声をかけていたのだけれど、こわばった顔つきで「何を描いたらいいか分からない」と固まっていた。ただ「観る」だけのショーだと思って来たら参加型で期待と違ったのか、英語を使っての共同作業が難しかったのか、フィリピン人に囲まれ日本人が一人(各グループに振り分けていたので)という状況に萎縮したのか。何が彼女たちをそんなに不愉快にさせたのかちっとも分からなくて、軽いショックだった。なにこれ。私がズレているのだろうか?

花売りの家族は、昨日ほどの大所帯ではなかったが今日も来てくれた。花を配ってもらい、今日は観客として立ち会ってもらった。昨日も来て昼間もジョリビー前で会った小さな男の子は、観客に交じってスクリーンの最前列に陣取り、影絵を一生懸命見つめていた。そして帰り際、私とMariaのところへ来て、ぎゅーっと抱き締めてくれたのだった。私がKarilyoのメンバーにもらった蝶のパペットを「あげる」と渡すと、にこにこと頭に飾った。昨日、劇場の中でさえもこわばった表情で花を売ろうとしていた彼の顔を覚えていたので、嬉しかった。

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終演のタイミングで、ペピンの里見くん・下田くん、菅原くんは帰国のため空港へ。劇場の入り口で「気をつけてね」と見送った。中澤くんだけはもう数日滞在する。

TetaはKarilyoの子たちを送り出さないといけないというのでAndrewとPaschalと近くのイタリアン料理店で食事をした後、3FでGreen Glass Door(Danielたち)のショー『Re: visions』を観た。トランスジェンダーな彼がシャーマンとして儀式のかたちをとり、女神を降臨させる。しかしその女神たちはビヨンセに始まりディズニープリンセス、マライヤ・キャリーやホイットニー・ヒューストンなのだった。アメリカン・フィリピーノであるダニエル自身の生い立ちが重なる。プレヴューから一番大きく変わっていたのはディズニーの動画を見せる場面でアニメそのものではなく、歌詞を表示する演出になっていたところ。複数の手法を使い分けてもよかったのではないか。私は彼の身体性を活かしてもっと憑依させたらいいんじゃないかと思ってプレヴューでも伝えたのだけど、そこは変わっていなくて、彼は座って動画を見ていた。

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( Photo by Brandon Relucio / KARNABAL FESTIVAL 2016)

その後に1Fで見たRuss Ligtas『D’oracle at Delipilar 』もシャーマンもの。私は開演直前に入ったせいで気づかなかったのだが、観客が用紙に質問を書いてボウルに入れておき、彼がその質問に神託を下す(オラクル)という作品だった。つまり即興だったのだと思うが、そんな風には見えなかった。Russはりっきーの昨年のコラボレーターで、てっきり憑依型のパフォーマーなのかと思ったら、けっこう自分の見せ方に自覚的な役者さんなのだというのが新鮮な発見だった。ただ英語の処理能力が極端に低下していて、内容が頭に入ってこなかった。ちなみにタイトルは“D’oracle at Delphi”を元に、Russが住んでいるDelipilar通りにかけたもの。

終演は22〜23時頃、もう疲れ果てていたけど、Eisaが彼女の作品『Macho Dancer』の会場候補であるマッチョクラブへ行くというので、ついていった。マッチョクラブというのは、男女の観客に対して男性のダンサーが肉体美を強調したダンスを見せるストリップ。Eisaは女性である彼女の身体でマッチョダンスを踊る作品を国内外で上演している。

クラブの中は撮影禁止。私たちは最前列の特等席に陣取り、料金は400ペソでビール2本。チップを渡せばダンサーを席に呼ぶこともできるらしい。Eisaによれば店によってダンサーのタイプも違い、このクラブのように背の高いムキムキマッチョばかり集めた店もあれば、「a boy next door(お隣の美少年)」タイプの店もあるそうだ。

全員ではないが性器を露出するダンサーもいて、ムッキムキに隆起したそれに薄手のスカーフをふわっとかけた状態で踊ったり、スカーフも取り払った状態で照明を落として暗い客席のあいだを通ったりするのだった。Eisaによれば勃起した状態を保つために器具(たぶんリング)を使ったりもするのでとても体に悪いそうだ。想像するだけで痛い。

客席はといえば、女性グループが多かったのが意外だった。てっきり男性向けのダンスだと思い込んでいたし、ダンサーたちの顔つきや体つきを見て、日本だったら女性よりも男性にモテそうな人が多いと感じたから。でも男女のカップル、男性一人客などいろいろな客がいた。踊っているダンサーのパンティにチップを挟むこともできて、私たちが目撃したのは2000ペソだった(約5000円)。裸体のダンサーが客席に入ってくるシーンの後、バーっと集団で帰っていく女性たちのグループがいてEisaが「たぶんコンサバ過ぎたのね」と笑っていたが、保守的な人たちでもここに来るのかなあ。

帰りのタクシーの中でSarahが「夏希は今日ショーが終わったから、ご褒美だね!たくさんのコック」と言って笑った。多すぎるよ、面白かったけどね。こうして『SOMATO- Life is a coffee break』の本番は幕を閉じた。

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