フィリピン日記 20160518

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2016年5月18日(水)

朝9時、Philcoaのジョリビー前で大井さんと待ち合わせ。大井さんはNPO法人ソルト・パヤタスの職員で、フィリピン在住十年以上。「ダンプサイト(ゴミ山)」で知られるパヤタスという地域の子どもや女性たちを支援している。彼らの多くはもともとケソンの街中のスラムに住んでいたが、都市開発(道路の拡張や駅の開発、ショッピングモールの建設など)によって政府に強制的に移住・定住させられた人たち。原則的に、ここから別の場所へ引っ越すことは許されない。

ゴミ山には「スカベンジャー」と呼ばれる、ゴミを拾って日銭を稼ぐ人々がいる。彼らはそれをジャンクショップで売ったり、業者に売る。かつては女性や子どもたちもたくさんゴミ山で働いていたが、2000年の崩落事故の後、15歳以下の子どもの立ち入りは禁止され、ゴミ山に入るにはIDと制服の着用が必要になった。現在、パヤタスだけで2000人くらいのスカベンジャーが働いている。彼らの1日の収入は10時間もの長時間労働にもかかわらず良くても100〜150ペソ。彼らがゴミ山から拾った廃品は、最終的には中国にたどり着く、と大井さんが教えてくれた。

ソルトの活動のひとつとして女性の収入向上(親の収入が低いため子どもが学校に行けない)があり、彼女たちに刺繍を教え、刺繍商品の開発・流通なども行っている。この前のジョリビーのパスポートケース(かわいい!)も彼女たちの手づくり。

夏休みなので比較的、道が空いている。20〜30分ほどでパヤタスに到着。ソルトの事務所兼ショップには、先日サンデーマーケットで会ったロレッタと、30代のダンダンがいた。彼女たちは若いながらマネージャーとして、お母さんたちの刺繍グループ「Rikha(リカ)」を取りまとめている。二人とも、今度の影絵に参加したいと言ってくれる。
元マネージャーでダンダンの母・ヴィッキーさんもやってきた。彼女は今、カシグラハン(同じくダンプサイトがある)という別のエリアを担当している。

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隣の建物には小さな図書館がある。司書のエルシーさんが、毎週金曜日には子どもたちのために色々なアクティビティをやっている、と説明してくれる。素敵な図書館だね、と言うと、とても嬉しそう。この仕事が好きなんだなあ、と感じる。
まずはエルシーさん、ロレッタとダンダンにプロジェクトの説明。彼らは影絵の体験を地域に持ち帰って、ここで子どもたちに教えたいという。

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その後、大井さんに集落を案内していただいた。危ないので一人では歩かないで、と、地元のお母さんがついてきてくれる。家並みのすぐ向こうに、ゴミ山が高くそびえている。日によってはかなりにおいがするらしいが、この日はうっすら、という感じ。

このあたりは「フェーズ2」と呼ばれるエリア。1丁目・2丁目みたいな感じで、フェーズ1〜4まで分かれている。どんどん高くなる&拡大するゴミ山のため、また別のダンプサイト(再定住地)への移住を余儀なくされた人たちもいる。政府は10万ペソ(執筆時点のレートでは約23万円)といった保証金をチラつかせて立ち退かせるが、抵抗した人は武力で強制退去させられ、保証金さえもらえなかったという。

野暮だが、なぜ彼らが抵抗するか聞いてみると「親戚も友人も、みんなここに住んでいるから」という答え。

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途中、リカのメンバーであるトリニダさん宅の前を通り掛かり、家にあげてもらった。裏通りに面して小さなサリサリストアを営む。いま2階を増築中なの、と自慢気に見せてくれる。隙間だらけの木造の床が抜けないかハラハラしたが、それぞれに結婚し子どもを産んだ娘たちも同居していて、この2階建て(この前まで平屋)に4家族20人が住んでいるという。キッチンも全家族分、4つある。あまりにも手づくりなんだけど、いろいろ工夫されていて面白い。トリニダさんは最近、白髪をピンクに染めたらしく、よく似合っている。歯のない歯茎を見せて、にっ、と笑う。

こちらは新築の2階の部屋、風が通って気持ちいい。2枚目の写真は2階のキッチン。3枚目は2階の窓からの景色、親戚の家も目と鼻の先なので、窓越しに世間話もできる。木製の窓(扉)にはちゃんとハンドルもついている。

パヤタス、そしてサン・イシドロといったダンプサイトは、湾岸部にあったいわゆる「スモーキーマウンテン」と呼ばれる初期のダンプサイトが閉鎖されたため、後からつくられた。それでも足りなくなり、今ではカシグラハンにもある。今度、影絵に参加してくれるダンダンとロレッタも、子どもの頃はゴミ拾いをしていたそうだ。

ここには、フィリピン随一の都市であるケソン中からゴミが集まってくる。フィリピンではゴミの焼却処理が禁止されている(有害物質の発生を防ぐような高温焼却炉が建設・維持できない)ため、あらゆる種類のゴミがただひたすら積み上げられていく。

ゴミ山の撮影は禁止されている。が、普通に街中で写真を撮れば背景に映り込んでしまう(ここは撮影OK)。子どもたちがバスケットボールをしている風景の向こうにも、ゴミ山がせり上がっていた。

写真でお母さんが手に持っているのが、スカベンジャーがゴミ拾いに使う道具。以前と違いゴミ山の角度や、発火を防ぐ砂利を敷くことなどが義務付けられ、今は「スモーキー」ではない。だがパヤタスでは2000年に大規模な崩落事故があり、数百人が家ごとゴミの下敷きになって亡くなった。

事故があった場所には慰霊碑が建っている。名前が載っているのは発見された約230名のみだが、実際の死亡者数は数倍ともいわれる。長雨によるゴミ山の崩落は、政府から委託を受けた管理業者の過失だった。遺族への保証金は一人たった3万ペソ、それも遺体が見つかった人のみで、遺体が見つからなかった人の家族には保証金すら支払われなかった。もちろん生き残っても、ゴミの鋭い破片で手足を失った人や後遺症に苦しむ人もいる。

捜索は途中で打ち切られたため、この慰霊碑の下にも、まだたくさんの人が掘り返されずに埋まっているそうだ。幽霊の噂も多い。少し前には修道女たちがやってきて祈りを捧げ、降霊させて死者の言葉を聞いたらしい。幽霊は、残された家族が心配で天国に行けない、と話したという。

トリニダさんの親戚の男性も3日間生き埋めになり、救出された時にはまだ生きていたが、真っ黒い水をたくさん吐いたあと亡くなった、と話してくれた。言葉がない。

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道端で水道管が破裂して、子どもたちがはしゃいでいた。トリニダさんが、私も昨日はここで水浴びしたのよ〜と笑う。私のカメラ(iPhone)を見て、「撮って!」とおちゃめなポーズを取る人も多い。男の人はアゴの下に指を添えるお馴染みのポーズをすることが多く、皆どこで見るんだろう、誰が最初にやったのかなあ、などと思う。

帰りは一人なので、ジープニーを乗り継いで帰る。ヴィッキーさんが乗り場まで送ってくれ、帰り方を教えてくれる。1台目のジープを終点で降りると、車内で隣と向かいに座っていた男の子二人組から「どこに行くの?乗り換えわかる?」と声をかけられた。ヴィッキーさんと私のやり取りを見ていたので、乗り換えがわかるか心配しているらしい。Teacher’s Village(フェスティバルの拠点があるエリア)と伝えると、同じ方向だから一緒に行こう、と乗り場まで連れて行ってくれた。

一緒にクバオ行きのジープニーに乗り込む。彼らはノルヴィックとシェルウィック、二人ともパヤタス出身で、勤務先であるクバオのホテルへ出勤するところ。隣に座ったノルヴィックは、フェーズ3に住んでいるという。

「どうしてパヤタスに来たの?」と聞かれたので事情を説明する。彼が、ぼくら二人ともパヤタスで生まれて学校も卒業したんだよ、と言うので、パヤタスは好き?と尋ねると、ちょっと困ったような顔で笑って「好きというか…だって、スモーキーマウンテンでしょ。でも、ホームタウンだから」と。大井さんからは、パヤタスの人は外で「パヤタス出身」だと言いづらい、差別されたり馬鹿にされたりするから、と聞いていた。

じゃあシェルウィックとあなたはgood friendsだね。と言ったら「そう、いや、best friendsだよ」と直された。

いつの間にか、ジープニーの外は本降りになっていた。Philcoaでノルヴィックがジープを止め、ここからMaginhawaまで歩いていけるから、と送り出してくれる。後からFacebook経由で「ちゃんと着いた?」とメッセージが入っていた。今度パヤタスに行くときは、向こうで会おうねと約束した。ソルトの人たちと引き合わせられるといい。

さすがにぐったりしたが、連れて行ってくれた大井さんに感謝。週に2日はパヤタスで過ごすという。タフだ。
ソルトは現地体験ツアーも開催している。彼女たちを支援することもできるので、関心のある人はウェブサイトを訪れてみてほしい。

雨が止むのを待ち、Kamias(カミアス)ロードのアップル専門店へ(モールにアップルストアがあるが、取り寄せにえらい時間がかかるらしい)。道中、水たまりで子猫が死んでいた。それをもう一度見るのがつらくて、すぐそばだけどジープニーを乗り継いで帰った。ありふれた光景でも、私はまだ慣れることはできない。ゴキブリは殺すけどね…。そしてMacの電源アダプタ、9000円以上したうえにコネクタがフィリピン仕様だった(涙。

その後、深夜まで作業。シャワーを浴びるとき、体から一瞬、パヤタスのにおいが立ち昇った。

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